【転生人形】転生したと思ったら人形だった件 第2話

私以外の誰も居ないこの部屋に、私以外の誰かの声が確かに聞こえた。

「うるさい」

私は怒鳴られたのだ、何者かの声によって。

「誰だ!誰かいるのか!?」

問うた答えは返ってこない。幻聴か?

否、幻聴では無い筈。私は藁にも縋る思いで再び声を発する。

「誰か居るのか、居るなら返事をしてくれ!頼む!」

誰か居るなら返事をして欲しいと強く念じて声を発した。

「う~る~さ~い!何なの!?」

返ってきた声は幼い女のものだ。

声の発生元は等身大ドールからであった。

「まさか、tami…なのか?」

「tami…ああ、私の名前ね———そうね」

僥倖である。等身大ドールであるtamiが動けるのであれば、何とかやりようがある。

「tamiよ、頼みがある。私を持ち上げてパソコンの前まで連れて行ってくれ」

目の前で横たわる等身大ドールに向かって頼む。何で喋れるとか、そんなものは二の次だ。

「嫌よ」

断られた、あっさりと。

「お、おい!?私はお前の所有者だぞ?」

「何言ってんの?あんたがマスターなわけ無いでしょ?」

そうか、姿か!?でも、後ろから話しかけているので見えていないと思っているのだが。

「こんな姿になってしまったが、私は君の所有者だ、マスターなんだ」

私は、かくかくしかじかをtamiに説明した。

「そんな与太話を信じられると思ってるの?」

人形が喋ること自体が与太話ではないか?そんな疑問は頭の隅に追いやり私は交渉を続ける。

「頼む、私を運んでくれ」

沈黙が流れた、数秒ほどだったと思う。

「無理よ、動けないもの」

嫌よから無理よに変わってしまった。動けない?

「動けないのか?私は動けているが?」

人形は動けるし、喋れるという常識に覆ったばかりだが?

「人形は喋れないし、動かないのよ」

どうやら、私の常識は再度覆ったみたいだ。

「あんた、何で動けるのよ?喋れるのだっておかしいのに」

tamiは喋っているわけではなく、念のようなもので人形同士のみでの会話が出来るだけとのこと。

私は、喋っている。空気を振動させてこの世界に音を発している。

困った、これではtamiはただの喋り相手にしかならない。

諦められない、終わりたくない。

「動いてくれtami」

「無理よ、諦めなさい」

諦めたくない。

こんな事故みたいな形で、生涯の幕を下ろしたくないのだ。Amazonで買った、コスプレ衣装の受取もまだだ。今日のはずだった。急がなくてはならない。

世界の声が聞こえた気がする。

「我が名、黒にんにくケーキのもとに、動けtami!」

その時、人形の私の身体が輝き出して拡がり、tamiの身体を覆う。

一瞬の出来事であったが。

「何が起こったの?それに…私…」

tamiは動いていた、手も足も頭も、声も空気を振動させて世界に音を鳴らせる。

「私…動いてる?嘘…」

世界の声が聞こえた。

力を行使せよと。そして…

「スキル:人形使い」

to be continued?

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